【地域インタビュー01】 現場にいたから、見えてきたものがある。 -岡田工務店 元代表 岡田 常彦 さん
「地域インタビュー」は、全国各地、様々な立場で一緒にNIPPONIA事業を作り上げている方たちを紹介するコーナーです。
今回は、NIPPONIAの事業に必要不可欠である工務店さんのストーリーをご紹介します。
兵庫県丹波篠山市に拠点を置く岡田工務店・前代表の岡田常彦さん。NIPPONIAの始まりを支えていただいた工務店さんの一つです。
NIPPONIA事業に関わるまで
岡田工務店は、NIPPONIAという名前が生まれるよりも前から、丹波篠山で古民家の改修を手掛けてきた工務店。岡田さんは三代目で、一線を退いた今でも関係者の方たちからは「棟梁」と呼ばれ頼られています。
丹波篠山で生まれ育ち、高校卒業と同時に親の工務店で働き始めた岡田さん。外の大工さんの下で数年修業もしましたが、一度も篠山から出たことはありません。篠山に根を下ろし、ずっと地域の中で仕事をしてきました。
30代を迎える前にバブルが弾け、それまでたくさんあった仕事も大きく減少。それでも工務店の職人たちのために仕事は必要です。待っていても仕事が来ないなら、作り出せばいい。
そこで岡田さんが考えたのは、新築した自宅をモデルハウスにして実際にお客さんが泊まることのできるイベントでした。自分で仕事を作り、宣伝する。当時は目新しい方法で、メーカーさんも真似をしたのだそう。
「元々変なことをやっちゃうんだよね。そして失敗ばっかり。けど、失敗して失敗せえへんことを見つけるしかない。やってみないと分からへん。」
未知のことでもまずはやってみる。岡田さんのその姿勢が、その後の古民家再生の仕事にも繋がっていきます。
これまでと違う直し方
2000年以前、古民家の再生はまだまだ一般的ではありませんでした。岡田工務店で手掛けていた古民家工事も、いわゆる“リフォーム”が一般的で「綺麗に、便利に直す」が主流でした。それがその時代のニーズだったからです。
一方で、丹波篠山市内には昔の景観が保存された「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)」があります。
岡田工務店はそのエリアの修復工事に携わることも多く、そして重伝建の工事の場合は、リフォームと違い建物の歴史性を尊重して建築当時の状態で修復しなければいけません。
現代の工法とは違う昔ながらの建物の扱い方は、そうした仕事も通して学んでいったと言います。
後々NIPPONIA事業へとつながる縁も、ここから生まれました。

きっかけは2009年。
市内の農村集落の一つ、丸山集落で始まった古民家再生プロジェクトに声をかけられたことが、その後の岡田さんの人生にも影響を与えていきます。
丸山のプロジェクトで頼まれたのは「歴史を感じられる改修をしてほしい」ということ。
伝統的なかやぶき民家の原型を保っていた丸山集落の家は昭和の後半に一度大きくリフォームされており、土間にはフローリングが、天井も空調効率のため低く張り直されていました。
それらを全て建てられた当時の状態に戻してほしい。それは、これまでの工事とまるで反対の内容でした。
「工事自体は難しいことはない。大工さんたちは古い家を新しくする工事をしていた人たちだからその逆もできる。ちゃんと技術がある人たちだからそれは問題はなかった。」
改修の作業は一度全てを剥がし、隠されていたものを見えるようにしていく作業でした。
そうして、黒くて太い梁が見えるようになり、再び土間が現れました。


丸山集落は2009年の秋に一棟貸の宿が開業し、順調に稼働し始めました。
その後も、2015年には同じく丹波篠山の城下町エリアで「篠山城下町ホテル NIPPONIA」を、2018年に同市内の宿場町エリアで「福住宿場町ホテル NIPPONIA(当時)」の工事を続けて担当します。
岡田さんが担当した建物は、立派ですが管理が行き届いておらず、中には半分崩れ落ちている建物もありました。
工事に着手する前にまずは家の中の片付け。さらに古民家の場合は工事を進めて追加の修理が分かることも多く、予算計画も変更になることがしばしば。通常のリフォームや新築に比べ、手間がかかることこの上ありません。
それでも「変なことをやっちゃう」岡田さんは頼まれた改修工事はできる限り受け続け、市内の古民家をいくつも再生させました。
そうしていつしか、自分の考え方にも変化が生まれてきたといいます。

「地元にずっとおったら古い建物に魅力があるなんて思わへんねんけど、自分たちが直した建物に高いお金を出してでも泊まりに来る人がいてたり、なんかそういう話をよく聞くようになる。だからこの仕事をしていて気が付いてしまった。その魅力に(笑)」
また、こんなこともあったのだそう。
「大学生が古民家の勉強しに来て「懐かしい」って言った。大学生が懐かしいっておもしろいなと思うやろ。古民家は、人のDNAが反応するような、何かを感じさせるものを持っとるってことや。それは新築にはない。」
古民家が持つ力は目に見えず、どんなに言葉を尽くしても語りきれない。
それでも確かに、伝え続けていかなければと思う何かがあると、岡田さんは言います。
岡田さんの次の挑戦
数年前、岡田さんは工務店の代表を息子さんに引き継ぎました。
無理やり継がせる気はありませんでしたが、一緒に古民家改修の仕事をしている中で息子さんから「後を継ぐ」と言ってくれたのだそう。
古民家を通して、ここでも繋がっていったものがあります。
いま、岡田さんは現場の仕事もしながら、丹波篠山市内の後川(しつかわ)というエリアで、地域の方たちと一緒にチームを組んで一棟の古民家を宿として改修し、自身の会社で運営も行っています。
後川は豊かな農村エリア。集落の周囲にある里山の自然も、集落の住人たちが長い歴史の中で築き上げてきたものです。岡田さんは、古民家だけではなく、自然と共にある風景も一緒に伝えていきたいと考え、その想いを体現する場所を作ろうとしています。
「失敗かもしれへんけど自分で考えながらやってみるっていうのは面白いっちゅうか、それは、魅力がある。」


最初は古民家に魅力があるなんて思わなかった。
けれど、自分たちの手で実際に作り上げてきたからこそ分かる価値を、岡田さんは今は確かに感じています。
そうしてよみがえった建物たちが、次の新しい発見や感動を生み出しています。
*岡田さんの運営する、「山里の宿 輪の里」のHPはこちら。
https://wano-sato.com/
■■■編集後記■■■
岡田棟梁のお話、いかがだったでしょうか。
工務店さんのお話をなかなか発信することができず、私自身がいつか必ずお伝えしたいと思っていた方でした。
実際の工事現場のトラブルや手掛けた宿のこだわりポイントなどは、会員記事としてお伝えしていく予定です!
それでは、次の記事もお楽しみに!
(2026/8/2 記事作成:NOTE 小栗)
